【開催報告】第2回YILオンライン講座 #3 強相関創発物質研究横断センター

矢上イノベーションラボラトリー(YIL(イール)所在地:神奈川県横浜市港北区日吉3-14-1/ディレクター:多田宗弘)は、慶應理工の研究ユニットによる研究のご紹介や、新たな科学・技術の解説をオムニバス形式でご紹介することを目的とする、YILオンライン講座を開催しました。

第2回は、強相関創発物質研究横断センター萩原学准教授、肥後友也准教授および先端量子計測ユニット渡邉紳一教授をゲストに招き、2025年12月18日(木)16時から、オンラインにて開催しました。

本イベントは、産学連携をお考えの企業のみなさまへ、慶應理工の研究領域の概要に対する理解を深め、研究者と民間企業との双方向コミュニケーションを円滑に進めるための基礎的な情報提供を目的としてYILが主催し、研究者の協力を得て実施しました。当日の発表内容を、後日、資料、動画で紹介する予定です。(公開先は、YIL産学連携アライアンス会員に限ります)

 

3#強相関創発物質研究横断センターを萩原学准教授および肥後友也准教授が紹介しました。

萩原学准教授が「酸化物エレクトロニクス熱電変換材料」と題して紹介しました。

強相関創発物質研究横断センターでは、融点が高く、化学的に安定な熱電変換材料の開発に取り組んでいます。500度から1,000度程度の高温熱源からの排熱を電力として回収し、効率のよいエネルギー循環システムを構築し、持続可能な社会づくりへ貢献することをめざしています。

実用化されている熱電材料の多くは、重金属系の化合物半導体ですが、高温では無次元性能指数(ZT)が低下、融点が低く、高温・大気中で容易に酸化するため高温での用途に向かないという課題があります。この課題を解決するため、金属酸化物(銅と鉄の結合酸化物デラフォサイトCuFeO2)を用いて優れた熱電変換の実現に向けた研究を行っています。デラフォサイトCuFeO2は、高温での使用が可能、無害で、材料設計の幅が広く、安価なプロセスにより多結晶体(セラミックス)の作製が可能です。物質としての特性を活かすには、結晶粒を配向させる技術の確立が重要ですが、反応性テンプレート粒成長法により、初めて結晶配向制御を実現、高い結晶性が実現するメカニズムの解明も行いました。今後、微細構造および欠陥構造をさらに高度に制御することで、実用的な熱変換材料としての活用が期待されます。世界の発電量の半分以上は使用されずロスしており、火力発電所においては排熱ロスが約60%発生しています。持続可能な社会の実現を目指して、熱を電気に変換する熱電材料の開発が世界中で進められています。

 

肥後友也准教授が「巨大な横型熱電効果を示す磁性材料の薄膜開発とデバイス応用」と題して紹介しました。

量子機能材料・デバイス研究室では、物性物理の知見を駆使して、半導体や磁石を超える次世代の電子材料を創製・デバイスを開発しています。新物質の開発指針として、電子の量子力学的自由度(電荷、スピン、波/位相)を駆使して、優れた量子機能材料(磁性体・トポロジカル物質)を設計し、世界最高品質の薄膜を作製しています。特に、薄膜作製技術に優れており、スパッタ法、MBE法を用いて薄膜作製を行っており、中でも、トポロジカルバンド構造を持つ物質の特徴的なバンド構造から期待される電子機能(堅牢な表面状態、高い電子移動度(半導体の100倍から1,000倍速い速度で電子が動く)、巨大横応答(従来電子の運動を曲げるためには外から磁場をかける必要がありますがトポロジカルバンド構造が作る磁場に類する力を電子にかけることができ非常に大きな横への応答を示す)、応答の操作)を開拓しています。研究成果として、温度勾配をかけた時に横方向に発電(横型発電効果)を示すトポロジカル磁性体薄膜の開発があります。デバイスも開発しており、テラヘルツで動作する不揮発性磁気メモリの素子開発や、熱の流れを可視化するセンサの開発を行っています。
未利用熱エネルギーの熱電変換において、200 度以下の中低温領域での熱マネジメント(発電・温度管理)に着目して、横型の熱電効果・巨大な異常ネルンスト効果を示すトポロジカル強磁性体の実現により、薄膜型熱源デバイス開発を行っています。