第1回YILユニットシンポジウム開催報告 基調講演3
「YILユニットシンポジウム―情報・AI・光・量子―」を開催しました。基調講演3では、「連携によるBeyond5Gを目指した新機能ファイバーによる超低遅延ネットワーク研究-慶應義塾未来光オープン研究センターの4年の成果-」と題して、慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センター所長の山中直明様からご紹介いただきました。

イントロダクションとして、ITU‑R(国際電気通信連合 無線通信部門)によるIMT‑2020(5G)のユースケースの3つの代表的な分類を示しました。1つ目は、 eMBB(enhanced Mobile Broadband:高度化モバイルブロードバンド)、2つ目は、URLLC(Ultra‑Reliable and Low‑Latency Communications:超高信頼・低遅延通信)、3つ目は、mMTC(massive Machine‑Type Communications:多数同時接続型通信)です。
次に、ユーザーとアプリケーションの観点から、自動運転が紹介されました。自動運転にはスタンドアロン型とネットワークコントロール型の2つのタイプがあります。スタンドアロン型は、センサーと車載AIで判断・制御するのに対し、ネットワークコントロール型は、CPS、デジタルツイン、メタバースと同じ概念で、統合制御、予測、最適化により安全で理想的な社会を実現するものであり、そのためには、低遅延、リアルタイムの技術が必要であると述べました。さらに、IMT‑2020における自動運転実証では、現場の自律性と中央の全体最適化を両立する通信・AI基盤が実現されることを述べました。具体的には、現場ではLocal & Physical AIおよびEdge AIが低遅延かつ自律的に動作し、中央ではCentral AIとCenter Cloudが集約・分析・全体最適を担い、両者はOptically‑connected pathおよびAPN(All‑Photonics Network)により、高信頼・低遅延な通信で結合された構成です。Beyond 5Gに向けたスマート社会における自動運転制御は、現実空間(Real:Now)で取得される位置情報や速度などのデータは、AIによって分析・学習され、将来の状態(Real:Future)を予測するサイバー空間上の知能へと昇華されます。この予測結果は制御データとしてフィジカル空間にフィードバックされ、経路選択、車線選択、速度制御といった自動運転制御に反映されます。このように、IMT‑2020で整備された通信・AI基盤を前提として、サイバー空間とフィジカル空間を循環的に連携させることで、Beyond 5Gが目指す高度で持続可能なスマートモビリティ社会が実現されると述べ、新川崎キャンパスで行われている自動運転の実証実験を紹介しました。

未来光ネットワークオープン研究センターは、最先端の光のメトロ/アクセス技術を研究する拠点として、2023年4月に総務省による支援の下で開設された産学連携拠点です。センターには、新しい光ファイバである空孔コアファイバ(Hollow Core Fiber)ケーブルを敷設し、2023年11月に世界で初めて実用に近い環境で空孔ファイバの実験を行うことができる施設となりました。現在、慶應義塾大学内外の19組織(キャリア、アカデミア)と連携して、次世代ローカル5Gのアクセスネットワーク実験、感覚通信(リアルハプティクス)、自動配送を可能とする超小型ビークルや自動運転車両、時空間をコンピューター上で同期させたネットワークコントロール型の制御システムの開発など、様々な応用実験が行われています。
空孔ファイバは、従来のガラスコア光ファイバとは異なる光閉じ込め原理により、ガラスよりも屈折率の低い空孔のコアに光を閉じ込めて伝搬する新しいタイプの光ファイバです。従来のガラスコア光ファイバと比較して 30%以上の低遅延化つまり 1.5倍の信号伝搬速度(信号伝送速度の限界である光速と同程度)を実現し、加えて、超多波⾧(伝送できる波⾧数を大幅に増やす)により通信チャネル数を 1000 倍以上に増やすことが可能で(https://pilab.jp/OpenLab/)、Beyond5G 時代に本格化する自動運転や遠隔ロボット(遠隔手術)、金融などの高速取引といったサー ビスの実現において極めて重要な超低遅延性を有しています。 加えて、超多波長(伝送できる波長数を大幅に増やす)により通信チャネル数を10倍以 上に増やすことが可能で、エネルギー密度および線形性(ハイパワー入力時の波形の歪みを抑える能力)は従来のガラスコアファイバと比較して1,000倍に向上することから、IoTへの電力供給を光ファイバで行うなど、適用範囲の大幅な拡大を実現します。また映像配信や 携帯電話基地局等において、アナログ信号を直接光ファイバで送っても波形のゆがみがないことを利用し、電子回路を大幅に簡素化することで省電力化も期待できます。空孔コアファイバは、本質的なブレークスルーであり、RoF(アナログ無線アンテナのエクステンション)とPWoF(ファイバーによるエネルギー伝送)が重要です。産学官連携、分野連携によって、ブレークスルーをねらうべきである。と述べました。
最後に、未来光ネットワークオープン研究センターは、連携を前提としたオープンラボです。大学発スタートアップの創出、大企業との共同研究によって、新しい技術の発信基地にしていきたいと考えています。と述べました。