【開催報告】第2回YILオンライン講座 #4 先端量子計測ユニット
矢上イノベーションラボラトリー(YIL(イール)所在地:神奈川県横浜市港北区日吉3-14-1/ディレクター:多田宗弘)は、慶應理工の研究ユニットによる研究のご紹介や、新たな科学・技術の解説をオムニバス形式でご紹介することを目的とする、YILオンライン講座を開催しました。
第2回は、強相関創発物質研究横断センター萩原学准教授、肥後友也准教授および先端量子計測ユニット渡邉紳一教授をゲストに招き、2025年12月18日(木)16時から、オンラインにて開催しました。

本イベントは、産学連携をお考えの企業のみなさまへ、慶應理工の研究領域の概要に対する理解を深め、研究者と民間企業との双方向コミュニケーションを円滑に進めるための基礎的な情報提供を目的としてYILが主催し、研究者の協力を得て実施しました。当日の発表内容を、後日、資料、動画で紹
介する予定です。(公開先は、YIL産学連携アライアンス会員に限ります)
#4先端量子計測ユニットを渡邉紳一教授が紹介しました。
先端量子計測ユニットは、最先端の量子計測技術を研究するグループが連携し、物質・生命科学研究や量子情報通信、新規量子デバイス開発へとつながる研究を推進しています。量子技術を積極的に活用することで、従来の計測技術の精度を極限まで高め、新素材開発や生命科学の探究、大規模情報通信の実現を目指します。また、国内外の研究機関との連携を強化するとともに、教育面では学生や若手研究者への支援を充実させ、次世代を担う人材の育成にも注力します。
生命情報学科加納研究室(非線形バイオフォトニクス研究室)では、光と分子との相互作用で発生する様々な信号光を用いて、生命情報の新しい可視化手法を開拓するとともに、分子集合体から生細胞、生態組織までを「化学の眼」で可視化し、未知の生命現象の発見とその本質の解明に向けた研究を行っています。特に、非線形ラマン散乱に注目しています。ラマン分光法は、生細胞内の分子分布や分子構造、動態を、非染色、非標識、非破壊、低侵襲でその場観察可能な非常に強力な手法の1つです。本研究の発展として、病理診断、疾患診断など医療への応用も目指しています。
物理情報工学科清水研究室では、原子、分子レベルの世界を直接見ることができる走査型プローブ顕微鏡技術(STM/AFM)と、ナノスケールの化学情報を可視化する先端光計測(探針増強ラマン分光・赤外散乱型近接場光学顕微鏡)を組み合わせ、これまで見えなかった材料の構造や機能を解析しています。また、光をサブナノメートル領域に閉じ込めることでのみ生じる光・物質相互作用の解明にも成功しています。
物理学科藤井研究室では、超高速レーザー・ナノフォトニクス・光エレクトロニクスをキーワードとして、これまでの常識にとらわれない次世代レーザー技術の開拓と、二次元材料に代表される原子層物質を組み込んだ電子と光の量子性を最大限に発揮する、量子光エレクトロニクスへの応用研究を行っています。光と物質の相互作用を高めることで観測できる電子・光子・フォノンの複雑で面白い現象を解き明かしながら(未知の物性解明)、物質固有の強い非線形性や室温でも安定に存在する勃起子を活用した「電子×光」デバイスの新たな可能性を追求しています。
サブユニットでもある「光ビッグデータプロジェクト」は、「光計測技術」を極限まで高めることにより日本の国際的なデジタル競争力向上を牽引する施策と連動する研究です。慶應義塾の次世代研究プロジェクト推進プログラムテーマでもあります。情報を担う光パルスの膨大な情報(光ビッグデータ)を光計測に応用する研究を行っています。ノーベル物理学賞受賞の「光周波数コム技術(光周波数の精密測定や光の制御・操作技術)を他に先駆けて取り入れ、光パルスのあらゆる膨大な情報を精密に制御し、光計測に応用する慶應の独自技術(膨大な光ビッグデータを自在にあやつる基盤技術)を、量子計測、量子通信に活用する取組みを行っています。応用領域として、先端医療計測、量子情報通信(光ファイバー通信網を介した光遠隔共有)、量子物性計測(光コム光源という精密なものさしを用いて周波数や距離などを高精度に測定することで、大量の時間分解の測定データを大量に取得し、色んな応用ができる)があります。
光周波数コム技術は、精密なものさしにとどまらず、革新的な応用が期待されており、急速に進化しています。光科学技術は社会の基盤であり、異分野融合の側面を有し、広範な科学技術分野に進展をもたらし続けています。