【開催報告】第1回YILオンライン講座 #1 量子最適化研究創発センター
矢上イノベーションラボラトリー(YIL(イール)所在地:神奈川県横浜市港北区日吉3-14-1/ディレクター:多田宗弘)は、慶應理工の研究ユニットによる研究のご紹介や、新たな科学・技術の解説をオムニバス形式でご紹介することを目的とする、YILオンライン講座を開催しました。
第1回は、量子最適化研究創発センター田中宗教授および半導体集積システム創発センター石黒仁揮教授をゲストに招き、2025年10月16日(木)16時から、オンラインにて開催しました。

本イベントは、産学連携をお考えの企業のみなさまへ、慶應理工の研究領域の概要に対する理解を深め、理工学研究科の研究ユニットと民間企業との双方向コミュニケーションを円滑に進めるための基礎的な情報提供を目的としてYILが主催し、研究ユニットの協力を得て実施しました。当日の発表内容を、資料、動画で紹介しています。(公開先は、YIL産学連携アライアンス会員に限ります)
1#量子最適化研究創発センターを田中宗教授が紹介しました。
量子最適化研究創発センターは、量子アニーリング技術をはじめとした量子最適化技術の応用による社会課題の解決に精力的に取り組んでいます。量子最適化技術は、多様な社会課題に内在する「最適化」計算を短時間・高精度で解くことができると期待されている技術です。目的に応じて膨大な選択肢の中から、制約条件を満たしながら、より適切な解を探索することができることが期待されています。
量子最適化研究創発センターは、量子アニーリング技術と社会ニーズとを結び付け、人材・資金・時間などのリソースの有効活用を通じて、企業が抱える課題の解決へ貢献しています。広告配信最適化、タクシー配車計画、運送会社配送経路計画、従業員シフト計画最適化、マルチモーダル交通最適化、触媒科学・表面科学、集積回路最適化、マテリアル探索最適化、金融最適化、フォトニック結晶レーザー最適化、CAE、スピントロニクス材料開発など、多様なユースケースの開発に取り組んできました。こうした取り組みを通じて、量子最適化技術のビジネス効果や普及に向けた課題、今後の展望に対する知見が蓄積されています。また、さまざまな業種の企業のみなさまとの議論を重ねる中で、今後取り組むべき重要な論点として2つの方向性が見えてきています。
1つ目は、量子コンピューティングとAIの融合により計算量や消費電⼒を抑えながらブラックボックス最適化を実現することです。具体的には、Factorization Machine with Quantum Annealing (FMQA)技術の応用を目指しており、材料、素材、創薬、データサイエンス、Optics、エレクトロニクス、化学、スピントロニクススピントロニクスなど、幅広い分野での活用が期待されています。2つ目は、この手法そのものについて、計算量や消費電⼒を抑える⼯夫を創出することです。こうした取組の結果、材料・素材分野やスマート製造分野におけるブラックボックス最適化問題では、成果が現れ始めています。一部の事例では、計算時間の1桁短縮に成功しています。
また、新規物理現象に基づく新しいハードウェアのあり方や、求められる機能の提案にも取り組んでいます。
ムーアの法則に沿って業界が研究製造を続けた結果、半導体技術は目覚ましい進歩を遂げました(半導体の微細化(小型化)・高集積化・低コスト化が実現)。しかし、近年では、この法則が限界を迎える可能性が指摘されています。1量子コンピューティングの研究に世界中が取り組んでいます。