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【実施レポート】
AIロボット実体験(ハードウェア編)

【実施レポート】<br>AIロボット実体験(ハードウェア編)

企画概要

2026年3月10日、慶應義塾大学のオープンイノベーション施設「YIL」にて、YIL研究教育プログラムのスタートイベントとなる「AIロボット実体験(ハードウェア編)」が開催されました。

講師は、機械工学科の石上玄也教授。16名の参加者が、四脚ロボットの操縦を体験しました。手動制御(モデルベース)の難しさと、AIの強化学習(モデルフリー)の凄さを身をもって学ぶことを狙いとしています。他学部生や学部1年生、留学生など幅広い参加者が集い、日本語と英語がナチュラルに交ざり合う国際的な雰囲気でプログラムがスタートしました。

**当日のタイムテーブル**
- 10:00 イントロダクション・自己紹介
- 10:10 レクチャー(ロボット制御の基礎)
- 10:20 練習会(四脚ロボットの操縦体験)
- 10:40 ハンズオン1(タイムアタック・前半)
- 11:30 ハンズオン2(タイムアタック・後半)
- 12:10 AI(強化学習)によるデモンストレーション
- 12:15 ランチ交流会・フィードバック


イベントの様子① 「不整地」に挑む、四脚ロボットの可能性

まずは1階で石上教授によるレクチャーが行われました。テーマは「不整地移動ロボティクス」。
冒頭では、環境(砂地、階段、瓦礫など)とスケール(広大か狭小か)の図が示され、それぞれの環境に適したロボットの形があることが解説されました。

たとえば「車輪型」はエネルギー効率が良く長距離移動に向いていますが、段差は苦手です。一方、工事現場で見かける「クローラ(キャタピラ)型」は走破性が高いものの、効率はあまり良くありません。そこで注目されているのが、人間や動物のように複雑な地形を乗り越えられ、かつ効率よく動ける可能性を秘めた「四脚ロボット(Legged)」です。

しかし、脚で歩くのは簡単なことではありません。脚を地について体を支える「立脚相」と、脚を浮かせて前に進む「遊脚相」の組み合わせ(歩容)をいかに制御するか。人間が数式で細かく設定する「モデルベース制御」に対して、何千回ものシミュレーションを通じてAI自身に最適な動きを学習させる「モデルフリー制御(強化学習)」というアプローチがあることが紹介され、参加者はこの後の実体験に向けた予備知識を深めました。


イベントの様子② 四脚ロボットの操縦と悪戦苦闘の練習会

レクチャーを終えた参加者たちは、2階に設けられた段差ステージへと移動し、いよいよ四脚ロボットの操縦練習に挑みました。

参加者は4つのチーム(A〜D)に分かれ、手元のコントローラーでロボットを操縦します。ロボットが複雑な段差を力強く乗り越えるたびに、他の参加者からも歓声が上がります。

一方で、バランスを崩してよろける様子には「ちょっとかわいそう」という声も漏れ、最先端の機械でありながらどこか親しみやすさが感じられました。しかし、実際に手動で障害物を越えさせるのは想像以上に難しく、多くの参加者が思い通りに動かせないもどかしさを味わいながら練習を重ねていきました。


イベントの様子③ タイムを競う白熱のハンズオン

操作のコツを掴んできたところで、チームごとにコースの走破タイムを競うハンズオンが始まりました。コースは「イージー」と「ハード」の2種類が用意されており、途中でステージを交代して両方に挑戦します。ロボットの転倒による事故を防ぐために、学生スタッフと参加者がロボットの吊り下げ装置を持って並走し、安全面もサポートしました。

まるでゲームをプレイしているかのような感覚で、参加者たちの表情も真剣そのもの。「いけるいける!」と思わず声が出る場面や、参加者同士で「このルートから攻めると進みやすそう」「行きと帰りで難易度が違う」と攻略に向けた情報交換をする姿が見られました。

見事に障害物をクリアした人が出ると自然と拍手が沸き起こり、チームの枠を超えて会場全体に大きな一体感が生まれていきました。


イベントの様子④ AI(強化学習)の凄さを実感するデモ

ハンズオンの最後には、2つのステージをつなげた完全版コースを用い、「強化学習」を用いた歩行制御のデモンストレーションが行われました。

強化学習とは、AIがシミュレーション空間で試行錯誤を繰り返し、最適な動き方を自ら獲得する手法です。

石上先生の解説によると、AIには「転んだらマイナス100点」「振動が大きすぎたらマイナス50点」「指示通り進めたらプラス10点」などといった報酬と罰則が設定されており、人間が細かく動きを指示しなくても、ロボット自身が「どうすれば高得点が取れるか(=上手に歩けるか)」を学習していくとのこと。

先ほどまで参加者たちが手動操作で大苦戦していた複雑な段差を、AI制御のロボットは驚くほどサクサクとスムーズに越えていきました。さらに、多少外から押されても姿勢を保てるほどの頑健性も持っています。参加者たちは、AI技術の適応力の高さを目の当たりにし、大きな感銘を受けていました。


あとがき/企画者のメッセージ

すべての体験プログラムが終了した後は、1階に戻りピザを囲みながらのランチ交流会が行われました。

冒頭に石上教授からタイムアタックの結果発表が行われ、見事上位となったDチームには大きな歓声と「Cheers!」の乾杯が送られました。その後は、リラックスした雰囲気の中、参加者たちは今日の体験や苦労したポイントについて和やかに語り合っていました。

今回のイベントで印象的だったのは、参加者たちが試行錯誤を楽しんでいた姿です。最初は恐る恐るロボットに触れていた学生たちが、思うように動かないもどかしさを共有し合いながらも「次はこうしてみよう」とチームで試行錯誤を重ねていく。その熱量の高まりを間近で見られたことは、運営としても大きな手応えとなりました。

執筆:YIL運営推進室
(写真撮影:川島彩水)