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YIL開所1周年記念シンポジウムーAI・科学技術・社会-を開催

YIL開所1周年記念シンポジウムーAI・科学技術・社会-を開催

2026年6月26日(金)、慶應義塾大学矢上キャンパスにおいて「矢上イノベーションラボラトリー(YIL)開所1周年記念シンポジウム-AI・科学技術・社会-」を開催しました。
本シンポジウムは慶應義塾大学のビジョン「未来のコモンセンスをつくる研究大学」の実現に向け、開所1周年を迎えたYILが研究・教育・社会実装の接点となり、今後の産業界との共創を探る契機となることをめざしたもので、日本学術振興会「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択された取組みの一環として実施されました。
本シンポジウムでは、現在注目を集めている「フィジカルAI」を軸に、浅川智恵子氏(慶應義塾大学特任教授、IBMフェロー エメリタ、日本科学未来館館長)、小野智弘氏(KDDI総合研究所Human-Centered AI研究所長)、嶌本 慶太氏(株式会社安川電機技術開発本部つくば研究所先端技術担当主事)による招待講演と慶應義塾大学理工学部の関連研究の講演等が行われ、参加した企業・自治体関係者、大学関係者、計160名超と今後の共創に向け活発な議論が行われました。
シンポジウムは村上俊之理工学部長の挨拶からはじまり、YILと連携関係にある一般財団法人慶応工学会の青山藤詞郎理事長に来賓ご挨拶をいただきました。
続く招待講演では、最初に慶應義塾大学特任教授、IBMフェロー エメリタ、日本科学未来館館長浅川智恵子氏から「AIスーツケース: フィジカルAIが拓く視覚障害者の移動の未来」と題して、失明された際に直面された情報へのアクセスとモビリティの困難がその後のキャリアの展開に結び付いたこと、インターネットやスマートフォンにより向上した情報へのアクセシビリティに比して遅れているモビリティの向上に取り組んでおられることが紹介されました。そして、リアルワールドへのアクセスを支援する「AIスーツケース」が大阪・関西万博の際のデモ映像や実物により披露され、社会実装に向けた法律、社会の理解、道路の段差改良といったインフラ整備の必要性が指摘されました。

浅川智恵子 慶應義塾大学特任教授、IBMフェロー エメリタ、日本科学未来館館長
浅川智恵子 慶應義塾大学特任教授、IBMフェロー エメリタ、日本科学未来館館長

次いで、KDDI総合研究所 Human-Centered AI研究所長小野智弘氏から「日常にAIが溶け込み、AIと人が自然に共生する社会へ向けた取り組み」と題して、KDDIによる「AI労働力」と「AI生活力」を支える事業やAI活用を支えるセキュアな通信基盤としての「AIデジタルベルト構想」などが紹介されました。労働人口が減少する将来に向け、人の能力をAIが支援しより高い価値を創出していくための取組として、日常業務での社員のAI活用、AIによるカスタマーサービスの効率化、AIが顧客に対応しスタッフを支援する店舗、ドローンによる作業のAIによる支援などと、TAKANAWA GATEWAY CITYでの未来ローソンをはじめとする社会実装の実証実験が披露されました。さらに人と共生するロボットに向けた慶應AIセンターへの参画やAIドローンと地域の連携、防災や地域課題の解決に向けた取り組みも紹介されました。

小野智弘 KDDI総合研究所 Human-Centered AI 研究所長
小野智弘 KDDI総合研究所 Human-Centered AI 研究所長

安川電機 技術開発本部つくば研究所 先端技術担当主事嶌本慶太氏からは「AIロボティクスによるものづくり現場の進化」と題して、自動化機器・ロボットの生産動作を分析・判定し次の動作に反映するi3 -Mechatronics(integrated, intelligent, innovative)とi3 -Mechatronicsが実現された工場が紹介されました。自動化された機器を統合したプロセスで材料・部品の投入から生産、搬出に至るデータを収集・分析・判定してフィードバックするとともに、上位システムともデータを連携し管理、学習、活用するシステムが示されました。さらに、自動化タスク拡大に向けて、作業力と判断力を兼ね備える自律ロボットによる変種・変量、多様な製品の効率的製造の可能性やバイオメディカル分野での熟練研究者の手技を備え研究者と同じ道具と使い実験を自動化するLabDroidまほろも紹介されました。

嶌本慶太 安川電機 技術開発本部つくば研究所 先端技術担当主事
嶌本慶太 安川電機 技術開発本部つくば研究所 先端技術担当主事

 
休憩をはさんで泰岡顕治 理工学研究科委員長から理工学研究科の改組と研究ユニットを簡単に紹介の後、「理工学部研究最前線」として講演が行われました。
まず、機械工学科石上玄也教授から「宇宙探査・利活用時代を支えるAIとYIL『うごかすStudio』による実践的人材育成」と題して、宇宙用ロボット研究、農業用ロボット研究、電動車いすによるサイバスロン世界第3位といった石上研究室の実績が述べられるとともに、月面への有人着陸と長期滞在を目指したアルテミス計画をはじめとした国内外の宇宙開発の現状が紹介されました。これらを背景に理工学研究科の宇宙探査・宇宙利活用ユニットが紹介され、科学探査から資源・探鉱などの作業へとロボットの役割が変遷する中での宇宙ロボットとフィジカルAIの展望が述べられました。最後に、脚型ロボット、ワークステーション、検証フィールドを備えたYIL「うごかすStudio」での実践的人材育成の概要と、学生の主体的な活動「KEIO Robotics」が紹介されました。

石上玄也 機械工学科 教授
石上玄也 機械工学科 教授

続いて情報工学科松谷宏紀教授から「フィジカルAIを支えるエッジAI技術」と題して、現場でセンシングされたデータを用いて学習、もしくはファインチューニングして推論まで行おうという松谷研究室が進めているオンデバイス学習AIが紹介されました。これは現場でのノイズ、センサの配置や個体差により事前学習に用いた訓練データとの間に生じるずれをエッジ側で学習、補正してAIの精度を向上しようというもので、具体的な適用例として、小さく軽いデバイスを組み込んだ「貼り付けるだけ異常検知器」、エッジでの画像認識AIのファインチューニング、家電製品のトラッキング発火の予兆検知、ロボットアームの動作異常検知、雑音の多い上下水道施設の異常検知などが挙げられました。エッジデバイスは主にセンシングを担い計算をデータセンターに集約する従来のクラウドAIに対し、エッジ側でデータを処理・学習することにより、エッジ側に付加価値を持たせる可能性が示されました。

松谷宏紀 情報工学科教授
松谷宏紀 情報工学科教授

システムデザイン工学科野崎貴裕准教授からは「身体性相互作用の秩序による知能創発ロボティクス基盤 」と題して触覚を備えたロボットの可能性が紹介されました。人間の五感のうち唯一対象にアクションできる触覚に関する学問領域「ハプティクス」に基づき、ロボットが対象に触れた感覚を操作者に伝送することが可能になり、山岳トンネルの発破作業での爆薬の装填や、重さ・硬さを判断して鶏肉をつかむ食品加工機械に適用された例が披露されました。また、力加減といった人の動きと対象の抵抗、固さを抵抗様式と力学的パワーとしてとらえ、AIで編集・学習し、ロボットに実装する方向性も示されました。具体例としてロボットによるドアの開閉動作が挙げられるとともに、JSTのムーンショット目標3のPMとして、2050年までに汎用ヒューマノイドロボットを実現し、食品加工 建設土木、生活・介護などの分野で実装する目標が語られました。またプロジェクトのハブとなる研究ユニット「制御・情報システム研究創発センター」も紹介されました。

野崎貴裕 システムデザイン工学科准教授
野崎貴裕 システムデザイン工学科准教授

最後に多田宗弘YIL運営推進室ディレクターによる「YILの活動と今後」、栄長泰明理工学部中央試験所長による「中央試験所紹介」が行われました。
次いでYIL・中央試験所見学会が行われ、YILの施設と石上教授の講演でも言及された「うごかす」をはじめとするStudioの活動に触れる機会となりました。また、中央試験所産学連携企業によるショート・プレゼンテーションも行われました。

YIL「うごかす」Studio
YIL「うごかす」Studio
産学連携企業ショート・プレゼン
産学連携企業ショート・プレゼン

シンポジウムの後は場所を変え、フォーラムで意見交換会が開催され、泰岡理工学研究科委員長による挨拶と乾杯の後、アットホームな雰囲気の中、今後の共創に向けた機運を盛り上げました。

イベント概要

名称 【開催報告】YIL開所1周年記念シンポジウムーAI・科学技術・社会-
主催 慶應義塾大学理工学部YIL
開催日/時間 2026年6月26日 13:00~
会場 慶應義塾大学理工学部 14棟マルチメディアルーム、36棟YIL・中央試験所14棟フォーラム

お問い合わせ先

部署 慶應義塾大学理工学部 YIL運営推進室
担当者 渡辺、諏訪、中上、髙橋
TEL 045-566-1717(48031)
E-Mail yil-keio@adst.keio.ac.jp